西海岸労使交渉が暫定合意

2023年6月15日、13ヶ月という長期の交渉となった西海岸労使交渉が暫定合意した。荷主、輸出入者、関係団体からは、ひとまず安堵の声が聞かれた。

 

 合意内容の詳細は発表されていないが、関係筋から入手した情報によれば、組合員の給与を初年度は4ドル62セント、次の年から契約が切れる5年間は毎年2ドルの時給アップが協定に盛られていくといわれる。

 

 しかも、昨年2022年7月1日に遡って支給されるという。

 仮に週40時間の勤務があると想定すると、4ドル62セントx40時間x52週で、

単純に計算すると9609ドル60セントの時給値上げ分が一旦支払われ、正規の時給も同額が上乗せされてこれから支給される。

 

 過去の交渉での平均的な時給増額が50セントから多いときで1ドル50セントであったことから、今回の増額が以下に大きいものであったかがわかる。

 

 また、組合側が強く主張してきたコロナ禍での献身的な荷役継続、コロナでの死者や入院者への慰撫金として7000万ドル(9億8千万円)が22000人の組合員に均等に支払われる。それでも、組合側は譲歩したと言っている幹部もいるようだ。

 暫定合意された内容はこれから地元に持ち帰られ、地域の組合のなかで説明がなされていく。最終的な合意に至るにはなお数ヶ月かかる見込みだ。

 

 そんな中、暫定合意後の18日、ロサンゼルス港に停泊する船舶を注視して見てみると、明らかに作業がスローになっているのが見て取れる。

 ガントリークレーンがコンテナの荷役をせずに宙に浮いた状態で30秒から1分ほど静止している。 通常1本のコンテナの荷役にかかる時間は平均で2分、1時間で30本ほどだが、

静止している時間もあり、1本あたりの荷役時間は2分を大きく上回っている。

 暫定合意はあくまで暫定で、最終合意、最終の調印までは油断がならない。

 

 1年以上暗礁に乗り上げ、進展が見られなかった交渉がバイデン大統領の指示で派遣されたジュリー・スー労働長官代行が入った途端、短時間で交渉が合意に至った背景には給与増額にあてる財源について何らかの策が提示されたと見る向きも多い。

 

 コロナ禍で過去最高益を享受した海運各社も、コロナ収束後、急激に下落する運賃で経営を圧迫されているのは明らかである。この先組合員の増額給与を賄える余裕はなくなってきている。

 

 近々、その財源負担は港に新設されるかもしれないサーチャージとして荷主に転嫁されるのでは危惧の念を抱くのは私だけだろうか。

 

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